トランプ関税で世界中大混乱・フィリピンへの影響は?
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フィリピンは、世界的に進行している貿易摩擦の影響を比較的受けにくいと広く見られていますが、完全に無縁というわけではありません。その理由として、主に以下の5点が挙げられます。
第一に、フィリピンは内需主導型の経済構造を持っており、国外の貿易動向に左右されにくいこと。第二に、海外からの送金が安定的に経済を支えていること。第三に、製造業貿易への依存度が低く、米中間のような大規模な製造業貿易戦争の影響を受けにくいこと。第四に、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業を中心としたサービス業が経済の大きな柱であること。そして第五に、貿易相手国が多様化しており、特定の国への依存が少ない上、自由貿易協定や地域的貿易連携の積極的な推進といった政策対応も進められていることです。
ブルームバーグ・インテリジェンスの分析によると、ASEAN諸国における関税の影響についての不確実性は依然として高いものの、インドネシアやフィリピンのような内需主導型の経済構造を持つ国々は、貿易ショックに対して比較的耐性があるとされています。
しかしながら、新たな米国の関税措置はASEAN諸国の通貨にも圧力をかけると予想されており、フィリピン・ペソ(PHP)も例外ではありません。これまでの経験則では、PHPの下落はフィリピン証券取引所指数(PCOMP)の下落と連動する傾向がありましたが、現在は外国人投資家の参加率の低下や外国人保有比率の低水準により、その相関性は大きく弱まっていると分析されています。それでもなお、一般的にPHP安は財閥系企業や消費関連セクターにはマイナスに働く一方、不動産セクターにはプラス、電力・公益事業セクターには中立的とされます。
このような不確実性の高い市場環境においては、市場全体のボラティリティに一喜一憂するのではなく、選別的な銘柄選定に注力することが重要と考えられます。具体的には、フィリピン市場において投資妙味が高いとされる注目銘柄として、BDO(バンキング)、ALI(不動産)、AP(エネルギー)、CNVRG(通信インフラ)、MONDE(消費財)、SM(複合企業)が挙げられています。
総評:
フィリピンは世界的な貿易摩擦の波において、相対的に安全な避難先と見なすことができる国の一つです。内需の強さ、政策対応の柔軟さ、多様な経済構造に支えられており、長期的な視点で見れば、短期的な市場の変動を乗り越えられるポテンシャルを持っています。投資家としては、市場のノイズに惑わされず、ファンダメンタルズに基づいた銘柄選定を行うことが、今後の成果に繋がると考えます。
本記事は、フィリピンの証券会社・ABキャピタル証券の20250404のレポート・ The Opening Bellから抜粋、要約したものです。
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