トランプ関税懸念下、フィリピン製造業堅調維持
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2025年5月の製造業生産量指数(VoPI)は前年同月比で4.9%増加し、2か月連続のプラス成長となり、過去10か月で最も高い伸びを記録しました。前年同月の4.2%および前月の4.3%を上回る結果であり、主に食料品の生産拡大が牽引しました。食料品の生産は前年同月比で15.7%増加し、製造業全体の18.7%を占めました。次いで輸送機器が13.5%増と好調でした。
2025年1〜5月の平均成長率は1.8%で、前年同期の1.7%をわずかに上回りました。また、工場の稼働率にあたる平均設備稼働率は76.9%で、前月の76.7%および前年同月の75.2%から改善しました。
堅調な国内需要が製造業の成長を支えています。輸出に対する外部要因の不透明感があるものの、家計消費の力強さが下支えとなっています。5月の貿易赤字は32.9億ドルと3か月ぶりの低水準となり、前年同月の47.3億ドルから大きく縮小しました。輸出は5か月連続で増加し、前年同月比15.1%増の72.9億ドルとなる一方、輸入は4.4%減の105.8億ドルでした。
ただし、米国のトランプ大統領による関税の計画が、今後の輸出や工業生産に影響を及ぼす可能性があります。一方で、フィリピンは近隣諸国に比べ関税水準が低いため、相対的には有利な立場であり、米国との通商交渉が進展すれば、さらに需要の拡大が期待できます。
関税の発動期限延期が世界貿易に不確実性をもたらし、企業の投資意欲を鈍らせており、中長期的には生産の伸び悩みに繋がる懸念があります。
一方、先行指標であるS&Pグローバルの製造業購買担当者景気指数(PMI)は5月に50.1と、4月の54.3から低下しました。これは、今後の製造活動がやや鈍化する兆候とみられます。
総評
フィリピンの製造業は国内需要の強さを背景に回復傾向にありますが、米国の関税政策が輸出に及ぼす影響には注意が必要です。食料品や輸送機器など基幹産業の成長はポジティブな兆しですが、先行指標であるPMIの低下が示すように、リスクも存在します。通商交渉や国際経済の動向が今後の成長に大きく影響します。
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