フィリピンの銀行融資増加傾向 by S&P
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S&Pグローバル・レーティングは、フィリピンの銀行融資が今後2年間で11%から13%成長すると予測しています。これは、同国が世界的な関税変動に対して比較的耐性があり、消費者ローンの増加が進んでいるためです。同社は、フィリピン経済は輸出への依存度が低く、関税の影響を受けにくいとし、これが銀行にとって安定的な事業環境につながるとしています。加えて、ローンの伸びはその後さらに加速し、約18%に達すると見込んでいます。
フィリピン中央銀行のデータによると、商業銀行の貸出残高は5月時点で前年比11.3%増の13.37兆ペソとなり、4月の11.2%増をわずかに上回りました。特にクレジットカードやパーソナルローンといった無担保の消費者ローンが今後も急成長する見込みで、これらは法人向けや住宅ローンと比べて利回りが高く、収益性の向上につながっています。一方で、企業向け融資は2024年の回復を経て安定化すると予測され、全体としての資産の健全性はインフレや借入コストの低下により、今後2年間は維持される見通しです。
一方で、無担保ローン比率の上昇は不良債権比率に影響を与える可能性もあります。4月の不良債権比率は3.39%となり、前月の3.3%から上昇しました。無担保ローンの延滞率も上昇傾向にあり、今後もこの傾向は続くと見られています。また、S&Pは銀行の不動産セクターへの大きなエクスポージャーを指摘しています。不動産価格の下落や地政学リスクは銀行収益に影響を与える可能性があるとしています。
S&Pは、オフィスやコンドミニアムの空室率の上昇や、不動産ディベロッパーによる借入金による資金調達依存の高まりもリスク要因と指摘しました。地政学的な緊張や原油価格の上昇はインフレ圧力を強め、融資需要を冷やす恐れもあるとしていますが、フィリピン企業の外債比率は比較的低く、通貨安にもある程度の耐性があるとしています。
総評:
フィリピンの銀行融資は堅調で、住宅ローン市場にも安定感がありますが、無担保ローンの不良債権増加には注意が必要です。不動産市場は空室率の上昇や価格変動リスクを孕んでおり、収益性の見極めが今後一層重要になります。立地と需要の精査を徹底し、中長期的な視点で投資を意識することが大切です。
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