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フィリピン財閥系デベ・SM Prime、賃貸収益が成長を牽引するも住宅部門に課題-依然割安な株価に注目

ニュース記事

SM Prime Holdings(SMPH)は、2025年上期(1H25)の純利益が前年同期比11%増の245億ペソとなり、市場およびABキャピタルの予想に沿った堅調な決算を発表しました。第2四半期(2Q25)単独でも純利益は128億ペソと、前年同期比・前四半期比ともに11%、10%の増加を記録しています。

収益の60%を占めるリース事業(モール、オフィス、ホテル)が成長を主導しており、モール収入は2Q25に前年同期比6%増、賃料は8%増、来客数も5%増と回復が継続しています。再開発中のモール・オブ・アジア(MOA)や、新規開業したSMラオアグなどが貢献しました。SMPHは2028年までにモールを100店舗に拡大する目標を掲げており、メガモールやノースエドサなどの再開発計画も進行中です。

一方、住宅部門は引き続き軟調で、第2四半期の住宅EBITは前年比4%減、プリセールスは42%減少しました。これは購入者の信用審査が厳格化されたことが影響しています。ただし、新規販売ユニット数は前年比59%増と回復の兆しもあり、すべて地方エリアでの供給でした。キャンセル率も5%未満に低下し、パギビグなどの公的融資を活用した手頃な価格帯の住宅商品により、回復の下地が整いつつあります。

オフィスと倉庫セグメントも安定した推移を見せており、稼働率は79%まで改善。サンタロサでの新規オフィスプロジェクト「The Core Towers」や地方都市での需要が追い風となっています。注目されるパサイ地区の埋立開発も進捗しており、現在76%が完了。年末までに砂埋め工程が完了する見込みで、土地の名義取得やプリセールスも予定通り進んでいます。2026年以降には土地販売も想定され、将来的な収益源として期待されています。

設備投資面では、年間予算2,500億ペソのうち58%が既に執行されており、主に埋め立て関連に充てられました。資金は内部資金と借入金で賄われており、健全な財務運営が維持されています。アナリストの評価も好意的で、目標株価は37ペソ、投資判断は「アウトパフォーム」とされています。

投資家の視点からは、現在の株価がNAV(純資産価値)60.7ペソに対して約60%のディスカウントで取引されており、過去5年平均のディスカウント率(20%)を大きく下回るなど、極めて割安な状態にあります。仮に埋立開発を除外してもなお54%のディスカウントが残っており、特にモール事業単体の推定NAV(28ペソ)を下回る株価は、他の事業や将来の開発価値を市場が過小評価していることを示唆しています。住宅事業の回復とともに、リース事業の安定成長、パサイ開発などの中長期的な収益源を加味すれば、同社は不動産・株式投資家にとって魅力的なバリュー銘柄といえるでしょう。

本記事は、フィリピンの証券会社・ABキャピタル証券の20250806のレポート・ The Opening Bellから抜粋、要約し、筆者のコメントを加えたのです。

家村 均