フィリピンのオフィス市場、需要回復と地方への分散により新たな成長段階へ by Colliers
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フィリピンのオフィス市場は、長年の停滞を経て、回復しつつあり、新たな成長局面に入っています。2025年上半期には、メトロ・マニラでの取引量が前年上半期の半分をすでに超える44万6100平方メートルに達し、力強い回復を示しています。
市場の特徴として、1000平方メートル未満の小規模取引が全体の56%を占めています。また、退去は徐々に減少しており、2025年上半期には前年下半期から27%減少し、38万2000平方メートルとなりました。このうち、オンラインカジノ(POGO)関連の企業が占める割合は17万4000平方メートルですが、POGO以外の企業の退去は2023年以降一貫して減少傾向にあります。
また、メトロ・マニラ以外の地方都市でも成長が見られ、主要都市でのオフィス需要は前年比28%増の15万9100平方メートルに達しています。セブやイロイロが地方市場の半分以上を占め、特にセブのオフィス空室率はパンデミック以来最低の16.8%まで低下しました。一方で、新興の地方都市ではBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)グレードのオフィス供給が不足しており、これが成長のボトルネックとなっています。
市場はPOGOの撤退による影響をほぼ克服し、信頼性の高い需要源である伝統的な企業やIT-BPM(ITビジネスプロセス管理)企業によって支えられています。未だ高い空室率やハイブリッドワーク、地政学リスクなどの課題は残るものの、2025年上半期に見られた勢いは、回復が持続的なものであることを示しています。
総評:
フィリピンのオフィス市場は、マクロな視点から見ると確実に回復軌道に乗っていると評価できます。特に注目すべきは、メトロ・マニラ市場における需要の多様化と、地方都市の成長です。小規模から中規模の取引が増加していることは、市場が特定の大型テナントに依存するリスクを減らし、より健全な構造へと移行していることを示しています。また、空室率の低下は賃料安定化、キャピタルゲインの機会に繋がります。
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