外国人投資家の売り越し傾向継続、フィリピン市場の外国人保有率は過去最低水準へ
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最新のデータによると、フィリピン市場における外国人の保有比率は7月末時点で18.98%に低下しました。この数値は今年2月の過去最低18.3%に近い水準であり、2015年以降の最低記録に迫っています。過去のピークは2017年の26.4%でしたが、その後は一貫して低下傾向が続いています。外国人投資家は最近になって再び売り越しに転じており、8月単月で7,400万米ドル、今年に入ってからは7億2,600万米ドルの純売り越しとなっています。
8月の主な外国人売却銘柄はBDOユニバンク(BDO)、SMインベストメンツ(SM)、バンク・オブ・ザ・フィリピン諸島(BPI)、メトロバンク(MER)、コンバージ(CNVRG)であり、年間でみるとSMプライム(SMPH)、ジョリビー・フーズ(JFC)、アヤラランド(ALI)、SMインベストメンツ(SM)、メトロバンク(MBT)が挙げられます。
一方、買い越し銘柄は8月にインターナショナル・コンテナ・サービス(ICT)、アヤラランド(ALI)、GTキャピタル(GTCAP)、アヤラ・コーポレーション(AC)、アボイティスパワー(AP)が人気で、年間ではチャイナバンク(CBC)、デジプラス(PLUS)、インターナショナル・コンテナ・サービス(ICT)、GTキャピタル(GTCAP)、アヤラランド・リート(AREIT)が上位となっています。
外国人投資家は銀行株から相対的に割安感のあるコングロマリットへの注目が高まっている傾向です。通信株はKP法(フィリピンの通信規制法)の影響で敬遠され、不動産株は利下げの恩恵によりやや改善傾向が見られます。また、国際的な成長期待が高いインターナショナル・コンテナ・サービス(ICT)への人気は根強く続いています。
過去8年間にわたり外国人投資家は継続的に売り越しており、2010年から2017年までの約70億3,000万米ドルの純流入は、2018年から2025年までの約70億8,000万米ドルの純流出によって完全に帳消しとなりました。特に、ベニグノ・アキノ前大統領の任期(2010〜2016年)中は約60億米ドルの純流入がありましたが、ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領の任期(2016〜2022年)では約40億米ドルの売り越し、そしてフェルディナンド・マルコス現大統領の任期(2022年〜2025年現在)においても約25億米ドルの純売り越しとなっています。
総評
フィリピン市場は外国人投資家の資金流出に直面し、保有比率は過去最低水準に近づいています。特に銀行や通信業界からの売り圧力が強く、投資家のポートフォリオはより割安なコングロマリットや国際展開の期待が高いインターナショナル・コンテナ・サービス(ICT)などにシフトしています。政策や規制の影響が色濃く出ているため、今後の市場動向を注視する必要があります。
本記事は、フィリピンの証券会社・ABキャピタル証券の20250905のレポート・ The Opening Bellから抜粋、要約し、筆者のコメントを加えたのです。
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