LINE

LINE登録

サポート内容

サポート内容

無料相談

無料相談

TOP

TOP

フィリピン汚職疑惑が経済見通しに影

ニュース記事

フィリピンでは大規模な洪水対策事業を巡る汚職疑惑が拡大し、政治リスクが高まっています。この問題によりインフラ支出が停滞する懸念が強まり、経済成長率の見通しは引き下げられています。

政府支出はGDPの約2割を占め、特にインフラ投資は2026年に約5%の寄与を見込んでいたため、遅延や凍結が成長率を大きく押し下げる可能性があります。試算では、インフラの20%が停滞すればGDP成長率が0.8ポイント低下し、40%では1.7ポイント、全面凍結となれば2.5ポイント失速し、2019年と同様の停滞につながると分析されています。

さらに、株式市場にも影響が及び、GDP成長率1ポイントの上下が企業収益に4ポイントの変動をもたらすと試算されています。市場ではすでにペソが9月にアジアで最も下落し、主要株価指数も外国人投資家の流出で年内最長の下落局面を記録しました。

加えて、米国の追加関税による輸出やサービス収入への逆風も重なり、資金流入が弱含むリスクが高まっています。クレジット面でも長期的な混乱が続けば格付け引き下げ懸念が浮上しますが、ムーディーズは現状では同水準の新興国と比べてまだ健全であると指摘しています。

一方、補完要因としては、構造改革や旺盛な個人消費が成長の下支えになるとの見方があり、S&Pは今後数年の平均成長率をおおむね安定的としています。また、マルコス政権は歳出の優先順位を変更し短期的な影響の緩和を図っており、長期的には汚職摘発が統治能力の改善につながれば投資家からの信認を強める可能性もあります。

総評:

今回の汚職疑惑はインフラ停滞を通じて成長率を直撃し、金融市場や信用リスクにも波及しています。短期的には消費や歳出再配分で下支えが期待されますが、不透明感は払拭できていません。長期的にはガバナンス改善が実現すれば、投資環境の強化につながる可能性があります。

本記事は、フィリピンの証券会社・ABキャピタル証券の20251002のレポート・ The Opening Bellから抜粋、要約し、筆者のコメントを加えたのです。

家村 均