フィリピン通信セクター分析:ブロードバンドが成長を牽引、モバイルは回復基調へ by ABキャピタル証券
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フィリピンの通信セクターは現在、固定ブロードバンド事業が成長の主要な牽引役となっています。2025年第3四半期において、主要事業者全体で合計34万件の純増を記録しました。この中で、グローブ・テレコム(GLO)は積極的なGFiberの展開により13.5万件の加入者を獲得し、市場をリードしました。コンバージICTソリューションズ(CNVRG)は、高い解約率も見られましたが、10.9万件の純増を達成しています。一方、PLDT(TEL)は9.6万件の増加に留まりましたが、高収益を重視した選択的な事業展開を進めている点が特徴です。
モバイルデータ事業についても、低調な四半期が続いた後、回復の兆しを見せ始めています。グローブ・テレコムは、トラフィック量が1,659ペタバイトと記録的な水準に達し、収益も252億ペソと過去最高を更新しました。これにより、同社はPLDTからモバイル市場シェアを25ベーシスポイント獲得しています。PLDTはトラフィック量こそ横ばいで推移しましたが、アップセル戦略によって付加価値を生み出すことに成功しています。5Gの普及拡大と消費者活動の改善に伴い、2026年にかけては緩やかな成長が予測されています。
最近施行された新通信法では、最終的な実施規則(IRR)が競争を促進する内容となりましたが、価格設定に関する定義は曖昧なままです。新規参入はまず光ファイバー分野に影響を及ぼすことが予想されています。回線卸売収益には上昇余地があるものの、上限が設定される可能性もあります。インフラ共有や「ディグ・ワンス(一度掘削すれば完了)」政策の導入は、長期的な設備投資(Capex)の低減に貢献するものと見られています。こうした環境下で収益を守るためには、事業規模、マーケティング力、そして顧客の定着率(スティッキネス)が鍵となると分析されています。
企業のポジショニングを見ると、グローブ・テレコムは光ファイバーとモバイルの両分野で勢いを保ち、コンバージICTソリューションズはインフラ共有政策の恩恵を受け、中期的な成長の可能性を秘めています。一方、PLDTは最も高い配当利回りを提供し、防御的な安定性を強みとしています。セクター全体の評価は、株価収益率(P/E)が過去平均を下回る水準にあり、依然として魅力的な水準にあると結論付けられています。
総評:
このセクターは、固定ブロードバンドの堅調な成長とモバイルの回復により、全体としてポジティブな局面を迎えています。規制環境の変化は競争を促し、初期の参入はファイバー事業をターゲットとする可能性が高いですが、インフラ共有などの政策は長期的なコスト効率を改善するでしょう。各社はそれぞれの強み(規模、成長性、安定性)を活かして競争を優位に進めることが求められ、セクターの投資魅力は維持されると見られます。
本記事は、フィリピンの証券会社・ABキャピタル証券の20251119のレポート・ The Opening Bellから抜粋、要約し、筆者のコメントを加えたのです。
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