Hotel101のミラノ進出と「親会社超え」の時価総額が示唆するDoubleDragonの潜在価値
ニュース記事
フィリピンの不動産開発大手DoubleDragon Corporation(ダブルドラゴン)の海外子会社であり、NASDAQに上場するHotel101 Global(ホテル101グローバル)は、欧州で2拠点目となるイタリア・ミラノでのコンドテル開発プロジェクトを発表しました。報道によれば、この「Hotel101-Milan」はミラノのリナーテ空港近くのサン・ドナート・ミラネーゼ地区に建設され、429室の客室を備える計画です。2028年の完成を目指しており、ユニット販売による売上高は約8,580万ユーロ(約58億ペソ)を見込んでいます。同社は、標準化された客室を個人投資家に販売し、ホテル運営を集中管理する「アセットライト(資産保有を抑える)」モデルを武器に、ニセコ、マドリード、ロサンゼルスなどに続く世界展開を加速させています。
今回のニュースで特筆すべきは、事業の拡大もさることながら、親会社と子会社の間で起きている「時価総額の逆転現象」です。NASDAQに上場したHotel101 Global(ティッカー:HBNB)の時価総額は、2025年11月末時点で約19億ドル(約1,100億ペソ規模)に達しています。一方で、その親会社であり、HBNB株の過半数(間接保有含め80%以上)を保有するフィリピン上場のDoubleDragon(ティッカー:DD)の時価総額は、およそ220億~300億ペソ程度にとどまっています。通常、親会社の企業価値には保有する子会社株式の価値が反映されるはずですが、現在の市場評価では、DoubleDragonが保有するHotel101株の価値(持分のみで約900億ペソ以上)が、DoubleDragon自体の時価総額を数倍も上回るという極端な「ねじれ」が生じています。これは、成長期待の高い「プロップテック(不動産テック)」銘柄として米国市場で高いバリュエーション(評価)を受ける子会社に対し、フィリピン市場の親会社がコングロマリット・ディスカウントや流動性の違いにより割安に放置されていることを示唆しています。この乖離は、DoubleDragonの株価に著しい見直し余地があること、あるいは米国市場がHotel101のグローバル展開に対して非常に高い期待値を織り込んでいることの証左と言えるでしょう。
総評:
Hotel101のミラノ進出は、同社のビジネスモデルが欧州の主要都市でも通用するという自信の表れであり、ブランドの国際的な認知度をさらに高める一手です。一方で、親会社DoubleDragonの時価総額が子会社の保有持分価値を大幅に下回っている現状は、株式市場における明らかな価格の歪みであり、投資家にとっては親会社の潜在的な割安感に注目する好機とも映ります。今後、Hotel101の実績が積み上がるにつれ、この極端な評価の乖離がどのように是正されていくかが市場の大きな関心事となるでしょう。
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