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フィリピン不動産市場の現在地:銀行の最新融資データから読み解く投資機会 by 中央銀行データ

ニュース記事

最新のフィリピン中央銀行(BSP)の統計によると、2025年第3四半期末の銀行セクターにおける不動産部門へのエクスポージャー(露出度)は19.54%となり、前年からほぼ横ばい、あるいは微減という結果になりました。この数字は、かつての爆発的な成長期を経て、現在の市場が「安定した選別期」にあることを示唆しています。

今回のデータで特筆すべきは、銀行の不動産関連投融資が減少する一方で、住宅ローン残高が前年比11.4%増と二桁の伸びを維持している点です。開発案件への直接投融資や証券化商品に対して銀行が慎重な姿勢を強めているのは、不良債権(NPL)比率のわずかな上昇を受けたリスク管理の結果と言えるでしょう。

しかし、これは裏を返せば、金融機関が無理な投融資を抑制し、市場のバブル化を防いでいる「健全なブレーキ」が働いている状態です。Colliers Philippinesの調査では、第3四半期のコンドミニアム成約数が前四半期比で大幅に回復しており、これは、投資投機というものではなく、実需に基づくものとの見方です。

中央銀行(BSP)は、直近で政策金利を4.5%まで引き下げましたが、市中の住宅ローン金利に、この利下げが反映されるまでには、まだ時間がかかるとの見方が一般的です。現在は「金利低下への期待感」と「依然として高いローン負担」が綱引きをしている状態であり、市場が本格的に再加速するのは2026年以降になると予測されます。

この「待ち」の状態は、短期的な利益を求める投資家にはもどかしいものですが、長期的な視点を持つ投資家にとっては、価格の高騰が抑えられている今のうちに優良物件を精査できる期間とも捉えられます。

現在の状況下で、投資家が取るべきスタンスは、過度な期待を排除した上での優良物件の長期保有ではないでしょうか。

金利動向だけでなく、日本のJICAが進めるマニラ首都圏地下鉄などの基幹交通インフラの路線計画に合わせたエリア選定も、将来的な資産価値の差別化につながります。

フィリピン不動産市場は、かつての右肩上がりの狂騒曲を経て、成熟した安定成長期への移行プロセスにあると見られます。銀行の慎重な融資姿勢は、市場のバブルを防ぐ防波堤として機能しており、投資環境としてはむしろ安定性が高まっていると言えます。

「一攫千金」を狙うフェーズではありませんが、人口動態の若さと経済成長率を背景に、中長期的な資産形成の場としての魅力は健在です。現在の「踊り場」を賢く活用することが、次なる上昇局面での果実を得る鍵となるでしょう。

家村 均