電力卸売市場を一時停止 ―フィリピン、エネルギー危機対応でさらなる踏み込んだ措置―
ニュース記事
中東紛争に端を発したエネルギー危機への対応として、フィリピン政府はさらに踏み込んだ措置を講じました。エネルギー規制委員会(ERC)は2026年3月26日(木)の深夜0時5分を期して、ルソン、ビサヤ、ミンダナオの全3グリッドにわたる卸電力スポット市場(WESM)の運営を停止しました。 この措置は、中東情勢に起因する燃料供給リスクと電力価格の乱高下に対処するためのものです。
WESMの停止は、国家エネルギー非常事態宣言を定めた大統領令第110号と、エネルギー省(DOE)からの停止勧告を受けて発動されました。 Erc市場の一時停止期間中、電力システムはDOEが発行する「特別運用ガイドライン(SOG)」に基づいて運営されます。このガイドラインは、利用可能な再生可能エネルギーの優先的・最適な活用、世界的な燃料供給不安を踏まえた重要燃料在庫の温存、そして系統運用の枠組み確保を主眼としています。
料金面でも大きな変更が伴います。停止期間中、ERCは「修正管理価格メカニズム(Modified Administered Pricing)」を導入する方針で、4月1日までの策定完了を目指して関係者と協議を進めています。新たな枠組みでは、石炭火力発電所には固定料金、天然ガス発電所には契約価格、水力・地熱などの再生可能エネルギーには優先ディスパッチ付きの管理価格が適用される見通しです。油発電所については、ディスパッチ時または契約に基づいた管理価格での補償となります。
こうした対応の背景には、現行の価格基準の陳腐化があります。ERCは、1月・2月の市場価格を基準としていた従来の仕組みが、燃料供給制約と世界的な燃料費高騰という現在の状況をもはや適切に反映していないと判断しました。
ERCのフランシス・サテュルニーノ・ファン委員長兼CEOは、「世界的なエネルギー混乱が生じている今、私たちの優先事項は明確です。フィリピン国民を守りながら、電力供給の安定と信頼性を確保することです」と述べ、WESMの一時停止と修正管理価格の導入は、燃料価格の変動による影響を緩和し、電力システムの健全性を守るための必要な措置であると説明しました。 GMA News OnlineWESMの停止期間は、ERCとDOEが通常市場運営の再開に適した条件が整ったと判断するまで継続される予定です。
【総評】
卸電力スポット市場の停止という今回の措置は、フィリピンが中東危機への対応を燃料調達から電力市場の根幹にまで広げたことを意味しており、エネルギー危機の深刻さをあらためて示すものです。市場メカニズムを一時的に停止して管理価格へ移行する手法は、電力価格の急騰から消費者を守る短期的な効果は期待できますが、市場の透明性や発電事業者の投資意欲への影響といった副作用も伴います。エネルギー調達の多様化と再生可能エネルギーの本格的な拡大なくして真の解決はなく、今回の危機がその転換を加速させる契機となることが強く望まれます。
- 電力卸売市場を一時停止 ―フィリピン、エネルギー危機対応でさらなる踏み込んだ措置― - 03/26/2026
- コロナ禍の知恵を燃料危機に活用 ―アジア各国、節約と給付で難局に挑むー - 03/25/2026
- 制裁対象国からの石油調達へ 〜フィリピン、ワシントンと異例の協議〜 - 03/25/2026