フィリピン中央銀行の融資猶予措置、銀行セクターへの影響は限定的
ニュース記事
フィリピン中央銀行(BSP)は、供給ショックに対応するための新たな融資猶予(フォーベアランス)措置を発表しました。今回の措置は、COVID-19禍における「バヤニハン法」のような全面的な介入とは異なり、実質的な影響を受けた借り手に限定した裁量的な対応となっています。このため、銀行の貸借対照表の質に広範な歪みをもたらすリスクは低いと評価されています。
収益への影響は概ね軽微で、かつタイミングに起因するものにとどまると見られています。最長6ヶ月(農業分野は最長1年)の返済猶予期間中も利息収入は引き続き発生するため、キャッシュフローへのダメージは限定的です。猶予対象となる融資はポートフォリオ全体の低~中一桁台のパーセンテージにとどまる見込みで、引当金の増加も5〜10ベーシスポイント(bps)程度と試算されています。
資産の質への影響も抑制的な範囲にとどまる見通しです。一時的に不良債権(NPL)分類から除外される措置は認識を遅らせる可能性があるものの、現在のシステム全体のNPL比率は1.6〜2.2%と低水準を維持しており、引当カバレッジ比率も100〜140%と十分な水準にあります。今回の措置による歪みは、対象が絞られていることを前提とすれば、10〜20bps程度にとどまると推定されます。
近い将来において銀行セクターの収益に大きな変動をもたらす可能性は低いものの、最大のリスクは措置の長期化です。信用コストが10bps上昇するごとに、一株当たり利益(EPS)は2.7〜4.0%、自己資本利益率(ROE)は35〜43bps低下する可能性があります。現時点では、CET1(普通株式等Tier1)比率が13〜16%と強固であり、利ざやも安定していることから、セクター全体の底堅さは維持されています。
今回の措置を受けて注目される銘柄としては、フィリピン最大手のBDOユニバンク(BDO)やバンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズ(BPI)が挙げられます。両行は高いCET1比率と分散されたポートフォリオを持ち、リスク耐性が高いと評価されています。また、メトロポリタン銀行(メトロバンク)も健全な引当カバレッジを背景に、相対的な安定性が評価される可能性があります。
【総評】
今回のBSPによる融資猶予措置は、対象を絞った合理的な政策対応であり、銀行セクター全体への影響は限定的と判断されます。強固な自己資本比率と安定した利ざやがセクターの resilience(回復力)を支えており、過度な懸念は不要でしょう。ただし、措置が長期化した場合の信用コスト上昇には引き続き注意が必要であり、各行の不良債権動向を慎重に見守ることが重要です。
本記事は、フィリピンの証券会社・ABキャピタル証券の20260416のレポート・ The Opening Bellから抜粋、要約し、筆者のコメントや考えを加えたのです。
本コラムは、上記記事の内容をベースに、筆者の見方、コメントなどを加えたものです。
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