最新:IMF世界経済見通し フィリピンは?
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国際通貨基金(IMF)は、米国の関税政策による世界的不確実性の高まりを受けて、フィリピンの国内総生産(GDP)成長率予測を2025年および2026年ともに下方修正しました。最新の世界経済見通し(WEO)によると、2025年のフィリピンの成長率は従来の6.1%から5.5%に引き下げられ、2026年も6.3%から5.8%に修正されました。これは政府が掲げる年間6〜8%の成長目標を下回る水準です。
IMFはこの下方修正について、2024年第4四半期のフィリピン経済成長が予想より弱かったことに加え、対外的な要因として米国の関税措置や貿易パートナー国の成長見通しの下方修正、金融引き締めによる影響などを挙げています。特に、米国のトランプ大統領が2025年4月2日に発表した、ほぼすべての貿易相手国に対する一律10%の関税導入が、世界経済全体に大きな影響を与えています。フィリピンに対しては17%の関税が課され、東南アジアの中では2番目に低い水準ですが、依然として輸出にとっては負担となります。
それでもIMFは、フィリピン経済が他国との比較において堅調に推移すると予想しています。国内消費の回復やインフレの低下、失業率の低水準が成長を支える要因とされ、東南アジアの中では最も高い成長率が予測されています。2025年の5.5%という成長率は、インド(6.2%)に次ぐ新興・途上国アジアで2番目の高成長です。
また、インフレ率については2025年は平均2.6%、2026年は2.9%と予測され、中央銀行の目標である2~4%の範囲内に収まる見通しです。これは、2025年初頭のインフレ率が予想を下回ったことや、世界的な燃料・食品価格の下落予測が背景にあります。ただし、サプライチェーンの混乱や貿易制限、通貨安、気候変動による自然災害などがインフレ上昇リスクとなる可能性もあるとIMFは警告しています。
金融政策に関しては、インフレ圧力が和らいでいることから、フィリピン中央銀行(BSP)は利下げを継続できる余地があるとされ、4月に25ベーシスポイントの利下げが実施されたばかりです。今年中に追加の利下げが行われる可能性が高く、次回の金融政策決定会合は6月19日に予定されています。
一方、世界全体では2025年の成長率は2.8%に減速し、2026年には3.0%に回復すると予測されています。これは1月の予測(いずれも3.3%)からの下方修正であり、新たな貿易措置とそれに伴う不確実性が世界経済の成長に大きな打撃を与えていることが背景にあります。特に、米国、中国、カナダ、日本、英国の成長率が軒並み引き下げられました。
IMFは、各国が安定的かつ予測可能な貿易環境の構築、債務再編、構造的な国内問題の解決に取り組む必要があると述べています。そうした対応によって、成長とインフレのバランスを取り直し、経済の回復力を高め、中長期的な成長の展望を再構築することが期待されます。
総評
今回のIMFによるフィリピンの成長率下方修正は、外的要因が経済に与える影響の大きさを如実に示しています。特に、世界的な関税引き上げや政策不透明感は、輸出依存度の高い経済にとっては大きな逆風となります。
フィリピンは、比較的輸出依存度が低く、内需の堅調さや金融緩和余地など依然として成長の余地があります。政策当局は、国際的な不確実性に備えつつ、構造改革とインフラ投資などを通じて中長期的な成長基盤を強化することが求められます。
https://www.bworldonline.com/top-stories/2025/04/23/667450/imf-slashes-phl-growth-forecasts/
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