フィリピンの経済成長率上方修正 〜インドに次ぐポジションに〜 by S&P
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S&Pグローバル・レーティングは、フィリピンが2027年までアジア太平洋地域で2番目に速い経済成長を遂げると予測し、同国の成長見通しを上方修正しました。最新のアジア太平洋経済見通しによると、2024年のフィリピンの実質国内総生産(GDP)は従来の5.7%から5.9%に、2026年は5.9%から6.0%に、2027年は6.4%から6.6%にそれぞれ引き上げられました。また、2028年のGDP成長率は6.5%と予測され、同年はインド(6.8%)、ベトナム(6.6%)に次いで3番目に速い成長と見込まれています。
今回の上方修正の背景には、米中間の二国間関税の大幅な引き下げがあります。特に、米国が国別に課していた「相互関税」の一時停止が、国際貿易と世界経済の見通しをやや改善させたとされています。S&Pは、この動きがフィリピンの輸出環境にプラスに働くとしながらも、依然として世界貿易の不透明感は高く、これはフィリピン国内の投資活動にとって重要な逆風であると指摘しています。
なお、トランプ前大統領によって導入された相互関税において、フィリピン製品に課された関税率は東南アジア諸国の中で2番目に低い17%でしたが、現在は90日間の一時停止措置が講じられており、基本関税率は10%のままとなっています。
フィリピン経済に対する米国関税の直接的影響は他国より相対的に小さいながらも、関税がグローバルサプライチェーンに与える間接的影響や世界経済への波及には引き続き注意が必要です。
一方で、S&Pは、フィリピンの政策金利が2024年末までに5.0%になると予測しており、これは中央銀行による0.25%の追加利下げを示唆しています。アジア太平洋地域の中央銀行は、インフレリスクが小さくなる状況下で、成長リスクに対応するために金融緩和を進めるとみられています。実際、フィリピン中央銀行(BSP)は先週、インフレ鈍化と成長の減速を背景に、政策金利を5.5%から5.25%へ0.25%引き下げました。
フィリピンのインフレ率について、S&Pは2024年の平均を2.3%と予測しており、中央銀行の目標レンジである2〜4%内に収まると見ています。2026年は3.2%、2027年は3.3%、2028年は3.0%になると見込まれています。これに対し、BSPは2024年の平均インフレ率を1.6%、2026年を3.4%、2027年を3.3%と見込んでいます。
総評:
フィリピン経済は、引き続きアジアで最も高い経済成長国の一つと見込まれており、外部環境の改善が今般のGDP成長率上方修正の後押しとなっています。一方で、世界貿易の不透明感は依然として存在し、投資の足かせとなる可能性があります。金融緩和の余地がある中で、インフレと成長のバランスを取った金融財政政策が今後の鍵となるでしょう。
https://www.bworldonline.com/top-stories/2025/06/25/681168/sp-hikes-phl-growth-forecasts-until-2027/
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