砂糖価格上昇、フィリピン食品関連企業への影響は?
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世界的に砂糖の価格が上昇しています。ロンドンでは白糖が1トンあたり480ドルと2週間ぶりの高値を記録し、ニューヨークでも粗糖が1ポンドあたり16.56セントまで上昇しました。インドが砂糖の輸出を禁止したことや、ブラジル・ヨーロッパでの天候不順による生産減少が背景にあり、世界全体で供給がひっ迫している状況です。
こうした国際価格の高騰を受けても、フィリピン国内では当面の影響は限定的とみられます。フィリピン政府は、精製砂糖42万4,000トンの輸入を砂糖命令第8号(Sugar Order No. 8)に基づきすでに承認しており、国内供給を確保しています。この措置により、価格上昇がすぐに企業や消費者のコストに反映されることは回避されています。
また、多くの消費財企業はすでに2025年末までに必要な砂糖を調達済みであるため、今年後半(2H25)におけるコスト上昇の影響はごく小さいと見られています。たとえば、URC(ユニバーサル・ロビナ・コーポレーション)、モンデ(MONDE)、センチュリー・パシフィック・フード(CNPF)、ジョリビー(JFC)などの企業がその対象です。
中でもURCは大きな強みを持っています。URCは、自社で砂糖の生産から加工、製品への使用までを一貫して行う「垂直統合型」のビジネスモデルを採用しています。このモデルによって、URCは砂糖価格が上昇しても、自社の食品事業に大きな影響を受けることなく、逆に自社の砂糖部門で利益を上げることができます。つまり、原材料コストを安定させつつ、砂糖の市場価格上昇を収益機会として活かせる点が大きなメリットです。
一方、外部から砂糖を調達している企業は注意が必要です。特にペプシやコカ・コーラ系のボトラーのように、原材料として砂糖を多く使い、かつ完全に輸入に依存している飲料メーカーは、今後コスト上昇の影響を受けやすくなります。また、モンデやジョリビーのように垂直統合をしていない企業は、2025年以降には砂糖調達コストの増加により、利益率が圧迫されるリスクが出てくると予想されます。
一方、CNPF(センチュリー・パシフィック・フード)は砂糖の使用比率がもともと低い点が特徴です。同社の主力製品はツナ缶やミート系加工食品などであり、菓子や清涼飲料のように砂糖を多用する商品構成ではありません。このため、CNPFは砂糖価格の変動に対して非常に影響を受けにくく、原材料コストの安定性という観点で見ても堅実な立ち位置にあります。
総じて、2025年後半までは砂糖価格の高騰が消費財企業の業績に与える影響は限定的です。ただし、その後は企業ごとの事業構造や調達体制によって差が出る可能性があります。URCのように自社内で砂糖を生産・供給できる企業や、CNPFのように砂糖への依存度が低い企業は、今後も安定したパフォーマンスを期待できるでしょう。
本記事は、フィリピンの証券会社・ABキャピタル証券の20250711のレポート・ The Opening Bellから抜粋、要約したものです。
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