フィリピン経済と政治の行方:「フラッドゲート」スキャンダルがもたらす波紋
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フラッドゲートスキャンダルが政局を動かしています。これは大規模な洪水被害を契機に、実態のない治水事業(いわゆる“ゴースト・プロジェクト”)が明るみに出たもので、公共事業をめぐる不透明な資金の流れが政権への信頼を揺るがしています。この問題はマルコス大統領により重くのしかかり、副大統領サラ氏が相対的に政治的優位を得る可能性が高まっています。また、当初注目されていたサラ氏への弾劾の動きは、このスキャンダルによって影を薄めるとみられています。
経済面では、2026年度予算審査における遅延や削減のリスクが指摘されており、政府支出の効果は限定的となる可能性があります。政府はGDP成長率6%を目標としていますが、現実的には5%程度にとどまる見込みです。その一方で、海外出稼ぎ労働者からの送金が引き続き家計消費を下支えしており、民間消費は比較的堅調に推移することが期待されています。
ただし、財政赤字と経常赤字という「双子の赤字」が経済の重荷となっています。これにより政府は新たな借入に依存せざるを得ず、その結果、資金が政府に偏ってしまい、民間企業が十分な資金を調達できなくなる「クラウディングアウト」現象が懸念されています。これは投資や成長を阻害する要因となり、外国人投資家の資金流出を加速させる可能性があります。すでに株式市場では外国人の売り越しが続き、ペソ安圧力が強まっています。
今後の注目点としては、9月23日に予定されている国際刑事裁判所(ICC)の公聴会が挙げられます。これはドゥテルテ前大統領に対する正式な訴追に関わるものであり、サラ氏の陣営が「フラッドゲート」を政治戦略に組み込み、ドゥテルテ氏復帰のシナリオを押し進める可能性も取り沙汰されています。
総評
「フラッドゲート」スキャンダルは公共事業の不透明性を象徴し、政権の信頼を揺るがしています。財政赤字による「クラウディングアウト」リスクは民間経済を圧迫し、成長鈍化を進めるリスがあります。政治と経済の両面で不確実性が高まる中、市場の警戒姿勢は当面続くとみられます。
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