LINE

LINE登録

サポート内容

サポート内容

無料相談

無料相談

TOP

TOP

2つの不動産関連法大改正が描くフィリピン不動産の未来〜土地収用法と長期借地法改正の相乗効果〜

ニュース記事

フィリピンの不動産・インフラ分野では、2025年が大きな転換点となりそうです。政府は「土地収容法:Accelerated and Reformed Right-of-Way Act(ARROW法)」を成立させ、長年の課題であった公共インフラ用地の取得遅延を抜本的に改善しようとしています。従来のRight of Way手続きは、補償交渉の複雑さや行政調整の遅れによって、道路や鉄道、エネルギー関連プロジェクトの進行を妨げてきました。ARROW法は、評価基準を統一し、補償価格を透明化するとともに、政府機関間の手続きを迅速化することで、国家インフラ計画を強力に後押しするものです。

この改革は行政効率の向上にとどまらず、不動産市場全体に広く好影響を与えると見られています。開発地域のインフラ整備が進むことで、アクセスが改善し、地価上昇や投資採算性の向上が期待できるためです。特に外国資本にとって、用地取得リスクが低下することは大きな魅力であり、これまで慎重だった海外デベロッパーの参入を促す可能性があります。

さらに、この流れと並行して、政府は以前のコラムでもご紹介したExtended Land Lease(長期借地法)の見直しにも踏み込みました。新法により、従来の「50年+25年」という制限が撤廃され、最大99年の借地契約が可能になります。この延長は、外国企業や長期プロジェクトを志向する開発事業者にとって非常に大きな追い風です。長期の土地利用権を前提とできることで、資金回収計画やインフラ・工場・商業施設の開発がより現実的になります。

従前の借地法には、契約更新リスクや期間の不確実性などの注意点がありましたが、今回の改正はそうした課題を制度面から大きく軽減する内容です。特に外国人の土地所有が制限されるフィリピンにおいて、99年のリース期間は「実質的な所有に近い安定性」をもたらすと言えます。

注目すべきは、ARROW法によるインフラ用地取得の迅速化と、Extended Land Leaseによる長期利用権の拡充が、相互に補完し合う点です。インフラ整備が進めば、借地開発地の価値が高まり、長期リース事業の魅力が増します。一方で、長期借地が可能になれば、民間投資が活発化し、政府のインフラ整備にも民間資金が流れ込みやすくなります。両者が連動することで、不動産開発とインフラ整備が同時進行し、投資環境全体が強化される構図が生まれます。

もちろん、今後の実施細則(IRR)の内容や制度運用能力が成果を左右しますが、改革の方向性は極めて前向きです。土地収容制度と借地制度という、これまで別々に扱われてきた仕組みが補完関係を築き、国内開発と海外投資誘致をともに支える基盤となりつつあります。

今回の大きな法改正は、フィリピンをより長期安定的な投資拠点へと導く重要な一歩と考えられます。政府の一貫した制度整備と透明な手続き運用が、ASEAN諸国の中でも際立つ投資先としての地位を確立する鍵になると考えます。

https://www.bworldonline.com/property/2025/10/14/704968/twin-reforms-to-boost-phl-property-sector-attract-global-players-colliers/

家村 均