AIの台頭・データセンターブームがフィリピンの不動産・株式市場に与える影響
ニュース記事
フィリピンでは現在、データセンターへの関心と投資が増加しており、これは同国の経済構造をデジタル時代に向けて根本から変える可能性を秘めた動きです。このブームの背景にあるのは、人工知能(AI)や機械学習(Large Language Model)といった高度な技術の台頭による、膨大なデータストレージと処理能力の必要性の増大です。現状、フィリピンのデータセンター容量は約146.2MWと、シンガポールなどの近隣国と比較してまだ小規模ですが、少なくとも1,382MWに及ぶ大規模な新規プロジェクトが計画パイプラインに乗っており、総容量は近く1,528.2MWに達すると見込まれています。データセンターの市場規模は2030年までに19.7億米ドルに成長すると予測され、高い成長率が見込まれています。
この驚異的な成長を後押ししているのは、政府による「クラウド・ファースト」政策、強固なITインフラ、そして世界最長級のインターネット利用時間を誇るフィリピン人の高いデジタル消費熱です。特に、Amazon Web Services (AWS) や Microsoft Azure などのアメリカを拠点とするハイパースケールクラウドプロバイダーが、現地市場へのデータセンター設立に向けた用地評価をメトロマニラや中央ルソン周辺で精力的に進めていることは、フィリピンがアジアのデジタルハブとして台頭している証と言えます。また、米国のデータセンター大手Equinixがすでに現地市場に参入するなど、グローバルな巨大企業の具体的な動きが、市場の信頼性を高めています。
不動産投資家の目線から見ると、このデータセンターの急増は、特に産業用不動産市場における最大のゲームチェンジャーです。データセンターは、安定した電力供給、大型トラックのアクセス、地盤の安定性といった厳しい条件を満たす土地を必要とするため、これらの優良な条件を満たす産業用地は、今後、プレミア賃料や地価の上昇を強力に牽引していくと見られています。
さらに、住宅不動産市場にも無視できない波及効果が見られます。データセンターの建設・運営には、ITスペシャリスト、ネットワークエンジニア、サイバーセキュリティ専門家といった高度なスキルを持つ人材が不可欠です。これらの高所得な専門職の流入は、データセンターが立地するエリア、あるいはその周辺の都市におけるコンドミニアムや賃貸住宅の需要を押し上げます。土地利用の多様化と雇用創出に伴い、高品質なコンドミニアムに対する需要が急速に高まり、賃料や価格の上昇に繋がる可能性が高いでしょう。投資家は、土地価格の上昇だけでなく、高スキル労働者の流入による住宅市場の活性化という側面からも、投資機会を捉えることができます。
また、株式投資家の視点では、このブームは通信事業者や、データセンターの建設・運営に携わるインフラ・電力関連企業にとって、追い風となります。AmazonやMicrosoftのようなビッグテック企業がデータセンターを建設し、大規模な電力を消費することは、再生可能エネルギーソリューションを提供する企業や、電力グリッドを強化するインフラ企業にとって、巨大なビジネスチャンスとなります。ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点からも、このデジタル変革の波に乗るインフラ関連セクターは、極めて魅力的な投資機会を提供していると言えるでしょう。
- PH1ワールド、主力プロジェクトの好調な需要に支えられ2024年販売実績が倍増 - 10/27/2025
- マニラWEST ZONEの水供給会社Maynilad IPO - 10/27/2025
- AIの台頭・データセンターブームがフィリピンの不動産・株式市場に与える影響 - 10/27/2025