LRT-1撤退報道が問うPPP鉄道事業の持続可能性
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メトロ・パシフィック・インベストメンツ・コーポレーション(MPIC)が、マニラ首都圏の主要鉄道路線の一つであるLRT-1(ライト・レール・トランジット・ライン1)の運営会社であるライト・レール・マニラ・コーポレーション(LRMC)からの撤退を検討しているという報道は、フィリピンにおける公共事業への官民連携(PPP)投資の将来的な信頼性について、アナリストの間で疑問を投げかけています。
MPICの会長兼社長兼CEOであるマニュエル・V・パンギリナン氏は、パンデミックによる利用客数の低迷が回復していないことや、運賃・規制の枠組みの課題から、LRT-1事業が継続的な損失を計上していることが、撤退検討の主な理由であると述べています。MPICはLRMCの株式の約35.8%を保有していますが、損失が続く状況に対し、投資家からライトレール事業からの撤退を検討するよう求められていると説明しています。MPICは、香港を拠点とするファースト・パシフィック・カンパニー・リミテッドの主要なフィリピン子会社の一つであり、主要株主にはメトロ・パシフィック・ホールディングスやGTキャピタルなどが名を連ねています。
LRT-1は、マニラ首都圏のケソン市(現フェルナンド・ポー・ジュニア駅、旧ルーズベルト駅)からカロオカン、マニラ、パサイを経由し、バクララン駅(パサイ市)までを結ぶ、全長約18.1kmの高架鉄道システムです。現在、カヴィテ州バコール市への延伸プロジェクト(カヴィテ・エクステンション)が進められており、第一期区間の開業により、一日の乗客数が約8万人増加し、パンデミック前の水準である約40万3,000人に回復することが期待されていました。LRMCは、この総額649億ペソのプロジェクトのうち、200億ペソを負担する義務を負っています。
LRMCの主要株主構成は、MPICが約35.8%を保有するほか、アヤラ・コーポレーションが約35%を保有しており、その他に住友商事が約20%、マッコーリー・インベストメンツ・ホールディングスが約10%を保有する合弁事業となっています。しかし、MPICが撤退を検討している背景には、運賃値上げがコンセッション契約で定められた2年ごとに許可されないなど、規制面での課題が収益性を圧迫している点があります。パンギリナン氏は、LRT-1の損失が続く状況から、他の鉄道プロジェクト(例えば、MRT-3の運営・保守入札)への参加意向もないことを示唆しており、これはMPICがライトレール事業全体から手を引く可能性を示唆しています。
交通省(DOTr)は、MPICの撤退検討を受けながらも、他の多数の投資家が将来的なPPP案件への入札に関心を示していることから、鉄道PPP事業全体の実行可能性は依然として高いという見解を示しています。しかし、アナリストは、運賃や規制の枠組みが商業的な持続可能性を確保するために再調整されなければ、MPICの撤退は公共交通機関への民間投資の長期的な健全性に疑問を投げかける可能性があると警鐘を鳴らしています。
総評:
MPICによるLRT-1事業からの撤退検討は、パンデミック後の利用客数回復の遅れと、公的規制下での運賃設定を巡る課題が民間事業者の収益を圧迫している現状を浮き彫りにしています。この動きは、フィリピン政府にとって、今後の大規模インフラPPP案件におけるリスクとリターンの枠組みを再評価し、民間投資家の信頼を維持するための重要な警鐘となるでしょう。規制当局が事業者の商業的持続可能性を確保するための具体的な対策を講じることが、PPP方式によるインフラ開発の成功には不可欠です。
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