OFW送金増加+フィリピン経済・マーケット見通し
ニュース記事
フィリピンの経済は、海外出稼ぎ労働者(OFW)からの送金に支えられ、消費面で一定の回復を示しています。2025年9月の現金送金は、フィリピンペソ安とOFWからの安定した資金流入に支えられ、前年同月比で3.7%増加しました。しかし、財務省(DOF)は、支出のボトルネック、インフラプロジェクトの実行遅延、および世界的な需要の弱さを主要因として挙げ、2025年の実質国内総生産(GDP)成長率が、政府目標である6.5%から7.5%の範囲を大幅に下回る可能性があるとの厳しい警告を発しています。
このGDP成長予測の下振れリスクは、単に海外要因に留まりません。送金増加は家計消費を控えめに下支えするものの、より根深い財政支出と民間投資の減速という構造的な要因を相殺するには不十分であり、経済成長のモメンタムは依然として脆弱であるという見方が強まっています。インフラ関連支出が縮小に転じ、家計の景況感が軟化している現状を踏まえると、マクロ経済の状況は、2025年の成長率がトレンドを下回る方向に傾きつつあると分析されます。
今後の経済の方向性を決定づける主要なきっかけとしては、12月11日に開催されるフィリピン中央銀行(BSP)の政策決定会合、2026年度の最終予算の行方、そしてインフラ監査の承認に関する最新情報が挙げられます。また、緊縮的な財政状況と公共設備投資の遅延が続く中で、消費者の回復力を測るため、年末の第4四半期の送金動向と12月のホリデーシーズンの消費支出にも注目が集まっています。
現在の不安定なマクロ環境に対応するため、投資戦略としては防御的なスタンスを維持することが推奨されています。具体的には、公共設備投資や不動産需要に敏感な景気循環株(シクリカル株)をアンダーウェイトとし、公益事業、REIT(不動産投資信託)、生活必需品株をオーバーウェイトとする方針です。送金は経済の「下支え(フロア)」としての役割は果たすものの、「カタリスト(触媒)」とはなり得ないとの見解であり、成長モメンタムを再活性化させるには、財政支出の実行体制の回復やインフラプロジェクト再開の明確なシグナルが求められています。
総評:
送金の安定した増加は個人消費を下支えしますが、政府支出の遅延とインフラ実行の停滞が主要因となり、2025年のGDP成長目標達成は困難であるとの見方が専門家の間で強まっています。インフラ支出の停滞と景況感の軟化を受け、マクロ経済環境は下方圧力に晒されており、当面は防御的な投資戦略が有効であると分析されます。成長モメンタムを再活性化させるには、財政実行力の回復やインフラ再開に向けた明確な政策転換が不可欠です。
本記事は、フィリピンの証券会社・ABキャピタル証券の20251119のレポート・ The Opening Bellから抜粋、要約し、筆者のコメントを加えたのです。
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