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成長への転換点:フィリピン・オフィス市場の「真の回復」と投資家が注視すべきリスク

ニュース記事

2025年も終盤に差し掛かり、フィリピンのオフィス市場が新たな成長フェーズへと移行しつつあることが、最新の市場データから明らかになりました。

コリアーズ・フィリピンのレポートによれば、メトロ・マニラのオフィス需要は予想を大きく上回る回復を見せています。特に2025年第3四半期までの純吸収面積(ネット・テイクアップ)は21万5,000平方メートルに達し、通年予想の15万平方メートルを既に突破しました。この好調の背景には、かつて市場を牽引したオンラインカジノ業者(POGO)の退去が一巡し、代わって一般企業やアウトソーシング企業(BPO)が需要の約7割を占める健全な構造への転換があります。

特にボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)は最も活発なサブマーケットとして19万3,000平方メートルの取引を記録し、市場を牽引しています。また、新たなホットスポットとして「C5コリドール(パシグ〜ケソン)」が台頭しており、ロビンソンランドのGBFセンターなどがBPO企業の拡張需要を取り込んでいます。地方都市ではセブが引き続き堅調で、マニラ首都圏外では最大の取引規模を記録しています。

一方で、楽観視できない要素も残ります。AI(人工知能)の普及によるBPO業界の雇用構造の変化や、米国で議論されている「雇用を米国に戻す(HIRE Act)」等の法案の行方は、フィリピンの主要テナントであるBPOにとって中長期的なリスク要因です。加えて、国内の洪水対策を巡る汚職スキャンダルなどが投資家心理に影を落とす可能性も指摘されています。市場は「回復」から「再構築」の段階にあり、ビルオーナーにはESG(環境・社会・ガバナンス)への対応やテナント重視のイノベーションが求められています。

【投資家の視点:回復の質と選別の重要性】

不動産および株式投資家の視点から見ると、今回のデータは「量的な回復」以上に「質的な改善」を示唆しており、ポジティブなシグナルと言えます。POGOという不安定な需要への依存度が下がり、より持続可能なBPOや一般企業の需要がベースになったことは、不動産開発会社(デベロッパー)やREIT(不動産投資信託)の収益の安定性を高める要因となります。

具体的な投資戦略としては、以下の2点が注目されます。第一に、「立地の選別」です。空室率が改善傾向にあるとはいえ、需要はBGCや新興のC5コリドーといった、インフラと職住近接が整ったエリアに集中しています。アヤラ・ランド(ALI)やメガワールド(MEG)、そしてC5エリアに強みを持つロビンソン・ランド(RLC)など、これら優良エリアに優良なポートフォリオを持つ銘柄は、賃料上昇の恩恵を享受しやすいでしょう。

第二に、「テナント構成のリスク管理」です。AIや米国の政策変更はBPO業界にとって逆風となり得るため、投資先デベロッパーのテナント分散状況を確認する必要があります。単にオフィス床を持っているだけでなく、ESG対応やハイブリッドワークに対応した柔軟なオフィス設計など、テナントをつなぎ留める「付加価値」を提供できる企業が、今後の勝ち組となるでしょう。短期的にはPOGO後の底打ちを確認した買いが入る局面ですが、長期的には「誰がテナントか」を精査する選別色が強まる展開が予想されます。

https://www.bworldonline.com/property/2025/11/11/711209/tilting-toward-growth-real-recovery-in-phl-office-market-amid-disruptions/

家村 均