フィリピンに広がるEVの波、トヨタが牽引する「マルチパスウェイ」の未来
ニュース記事
フィリピンの自動車市場において、EVへのシフトが急速に加速しています。トヨタ・モーター・フィリピン(TMP)が発表した最新のデータによると、2025年1月から11月までの期間における同社の電動車(EV、ハイブリッド車を含む)の販売台数は、前年同期比で45%という驚異的な伸びを記録しました。トヨタとレクサスの両ブランドを合わせた販売台数は16,986台に達し、前年の11,745台から大きく飛躍しています。内訳としては、トヨタブランドが15,455台、高級車ブランドのレクサスが1,531台となっており、市場全体で電動車が確実に浸透している様子がうかがえます。
この好調な背景には、トヨタが提唱する「マルチパスウェイ(全方位)」戦略があります。これは、単一の技術に依存するのではなく、各地域のインフラ状況や顧客のライフスタイルに合わせて、ハイブリッド車(HEV)、バッテリー電気自動車(BEV)、ガソリン車、ディーゼル車といった多様な選択肢を提供するという考え方です。フィリピンにおいては、特にハイブリッド車が重要な役割を果たしています。充電インフラがまだ限定的な国内環境において、外部からの充電を必要とせず、燃費性能と信頼性に優れたハイブリッド技術は、最も現実的で受け入れやすい選択肢となっています。
特に、最近投入された「ATIV(日本名:ヴィオス)」のハイブリッドモデルは、ラインナップの中で最も手頃な価格帯を実現しており、電動車所有へのハードルを大きく下げました。これに加えて、同社初の本格的なバッテリー電気自動車である「bZ4X」やレクサスのBEVモデルが市場に加わったことで、消費者の選択肢はさらに広がっています。
トヨタは、政府が掲げる「2030年までに温室効果ガス排出量を75%削減する」という目標を全面的に支持すると表明しています。運輸部門が排出するガスが環境に与える影響を重く受け止め、2030年までに東南アジアでの新車販売に占める電動車の割合を30%にするというグループ全体の目標達成に向けて、同社は着実に歩みを進めています。持続可能なモビリティの実現に向けたトヨタの挑戦は、フィリピンの街並みを着実に変えようとしています。
(総評)
フィリピンのような発展途上のインフラ環境において、現実的な解決策であるハイブリッド車を軸に据えたトヨタの戦略は見事に功を奏しています。環境負荷低減と消費者の利便性を両立させるこのアプローチは、新興国における電動化の理想的なモデルケースと言えるでしょう。政府の目標達成に向け、官民が連携して充電インフラの整備をさらに進めることで、この勢いは一層加速していくことが期待されます。
- フィリピンのAI革命とインフラ改革:BPOの高度化、外資開放、そしてインド・ASEANとの覇権争い - 12/27/2025
- フィリピン経済の現状と2026年への展望:踊り場を脱し、再加速へ向かうか - 12/27/2025
- フィリピンに広がるEVの波、トヨタが牽引する「マルチパスウェイ」の未来 - 12/27/2025