フィリピン銀行セクター:安定収益と戦略的差別化の進展
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2025年度のフィリピンの銀行セクターは、貸出資産の着実な増加、安定した利回り、そして管理可能な資産の質を背景に、非常に回復力のある決算内容となりました。業界全体の貸出成長率は前年比10.3%と緩やかな伸びを見せましたが、BDO、BPI、CBCといった主要行においては、個人向けのクレジットカード、自動車ローン、個人ローンなどが牽引し、前年比13%から15%という高い成長率を維持しています。
今回の決算シーズンから読み取れる重要な動向は、各行が消費者向け融資へのシフトを一段と強めていることです。フィリピンにおける個人向け融資の浸透率は、対GDP比でわずか12.8%という構造的に低い水準に留まっており、開拓の余地が非常に大きい分野です。特に個人向けビジネスに強みを持つ銀行は、高い利回りと手数料収入の増加という恩恵を享受しています。
ここで、銀行経営の健全性を測る上で重要な指標である「NIM(純金利マージン)」と「クレジット・コスト(与信費用)」について触れておきます。
NIM(Net Interest Margin:純金利マージン)とは、銀行が貸出や運用で得た利息収益から、預金などで支払った利息費用を差し引いた利益の割合を示す指標です。今回の報告では、各行のNIMは3.7%から4.9%という安定した範囲で推移しています。
クレジット・コスト(Credit Cost)とは、貸し倒れに備えた引当金の計上や、実際に発生した焦げ付きによる損失費用のことです。現在、無担保の個人向け融資で一部に初期的な圧力は見られるものの、業界全体の与信費用は過去の標準的な範囲(40~80ベーシスポイント)に収まっています。
資産の質に関しては、不良債権比率(NPL比率)も1.6%から2.2%の間で安定しており、セクター全体として良好な状態を維持しています。一方で、成長戦略やポートフォリオ構成の違いにより、各行の収益パフォーマンスには明確な「格差(ディバージェンス)」が生じ始めています。
直近の市場の売り崩しを経て、フィリピンの銀行セクターのバリュエーションは過去の推移から見ても割安な水準にあります。現在、セクター平均のPBR(株価純資産倍率)は約0.9倍、ROE(自己資本利益率)は約13.7%となっており、その収益性の高さに対して株価は非常に魅力的な位置にあります。こうした状況は、優良な銀行株を蓄積する好機と言えるでしょう。
総評 フィリピンの銀行セクターは、底堅い経済成長を背景に個人向け融資という成長エンジンを確実に捉えています。現在はバリュエーションが歴史的な低水準にあるため、収益力に対して割安な投資機会が提供されている状態です。特にBDOやBPIのような強固なフランチャイズを持つ大手行への注目は、今後も継続していくと考えられます。CBCは「攻めの割安株」という立ち位置です。リスクを取ってでも、セクター全体の回復局面で市場平均を上回る利益(High Beta)を狙いたい投資家に向いている銘柄と評価されていることになります。
本記事は、フィリピンの証券会社・ABキャピタル証券の20260310のレポート・ The Opening Bellから抜粋、要約し、筆者のコメントや考えを加えたのです。
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