2025年、トランプ2.0のフィリピンへの影響はASEAN諸国で一番少ない?
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フィリピンは、米国次期大統領ドナルド・トランプ氏が提案する保護主義的な政策に対して、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で最も影響を受けにくいとHSBCが指摘しました。HSBCは、フィリピンの輸出構造や財政の強固さがその理由だと述べました。
フィリピンの耐性要因
- 米国への輸出依存の低さ
フィリピンの対米貿易黒字は非常に小さいため、トランプ氏が提案する高関税政策の影響を受けにくいと指摘されています。一方で、サービス輸出への依存度がASEANで最も高く、これは関税の対象外であるため、特に影響を受けにくいとされています。 - サービス輸出の強み
フィリピンのサービス輸出はデジタル化や人工知能(AI)分野での成長が期待されており、これが今後の競争力の源となっています。2023年の中央銀行のデータによると、フィリピンのサービス輸出額は前年同期比6.25%増の374億ドルに達しました。 - 強固な財政基盤
フィリピンはASEAN諸国の中で唯一、税収対GDP比率が上昇しており、インフラ投資など長期的な成長に向けた財政余力があります。マルコス政権はGDPの5~6%をインフラに年間投資する計画を立てており、この分野は関税リスクに晒されることがありません。
潜在的なリスク
- 金利政策への影響
トランプ氏の政策が完全に実行された場合、米国のインフレ圧力が高まり、連邦準備制度(FRB)が利上げを余儀なくされる可能性があります。これにより、フィリピン中央銀行(BSP)も金利を引き上げざるを得なくなり、投資環境が悪化するリスクがあります。 - ペソ安の可能性
フィリピンペソは1ドル=59ペソを超える水準に下落する可能性があるものの、他のアジア通貨に比べて下落幅は小さいと予想されています。BSPは豊富な外貨準備を活用し、市場のボラティリティを抑える姿勢を示しています。 - 米国金利の影響
米国金利が上昇すれば、フィリピンの中央銀行が政策金利を引き下げるタイミングが遅れる可能性があります。HSBCは2025年第3四半期にフィリピンの政策金利が5%に引き下げられると予測していますが、米国金利の動向次第でさらに遅れるリスクも指摘されています。
まとめ
フィリピンはASEANの中で最も米国の保護主義的政策の影響を受けにくいと評価されており、特にサービス輸出や財政基盤の強さがその理由です。一方で、金利政策やペソ安の進行といった間接的な影響が懸念されるため、慎重な経済運営が求められます。
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