フィリピン中央銀行、ペソ安容認で輸出と直接投資促進か? by HSBC
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フィリピン中央銀行(BSP)は、ペソを一定程度減価させる余地があり、これにより輸出と投資の流れを支援できる可能性があるという見方があります。HSBCは、より競争力のあるペソは輸出と海外直接投資(FDI)に利益をもたらすため、BSPはより防御的でない外国為替(FX)政策に移行する余地があると述べています。また、フィリピンは米国政府からの貿易関係や通貨政策に関する厳しい監視を受けていないため、BSPが米ドルの下落時に外貨準備を積み増し、ペソの過大評価を是正することが可能であるとしています。
HSBCは、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策から独立することでペソの減価を容認することにはメリットがあると指摘しています。貿易や投資の不確実性が成長に影響を与える中、より競争力のある通貨は、急成長するサービス輸出を後押しし、経済にとってプラスに働く可能性があると分析しています。
また、HSBCはBSPが外国為替の変動リスクを抑えることから成長促進へと焦点を移す可能性があると見ています。しかし、この移行は年の前半には起こらず、後半にかけて徐々に進むと予想しています。金利と為替政策が連動する中で、フィリピンと米国の政策金利差が縮小することで米ドル高・ペソ安が進むと見られ、BSPは米ドル売却による市場介入を弱める可能性があるとしています。
BSPのレモロナ総裁は、BSPはFRBの動きを注視しているものの、必ずしもそれに追随する必要はないと述べています。FRBは1月の会合で金利を据え置いており、2024年には合計1%の利下げを実施しました。FRBは2024年9月に金融緩和を開始しましたが、BSPはそれに先立つ8月に利下げを行っています。
HSBCは、より弱い通貨がフィリピン経済の貿易競争力を高める可能性があると述べています。フィリピン統計庁の最新データによると、2024年のフィリピンの貿易赤字は3.1%拡大し、542億1,000万ドルとなり、過去2年以上で最大の貿易赤字を記録しました。これは、2024年の輸出額が前年比0.5%減の732億1,000万ドルにとどまり、政府の予測していた4%成長に届かなかったことが一因です。
HSBCは、競争力のある通貨が製造業の発展にも寄与すると指摘しています。一方で、フィリピンの主要輸出品である電子製品は2024年に大きく減少しました。電子製品の輸出額は前年比6.7%減の390億8,000万ドルとなり、特に半導体輸出は13.5%減の291億6,000万ドルとなりました。
さらに、サービス輸出も伸び悩んでおり、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)関連の輸出は成長を続けているものの、観光関連の輸出は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前の水準を維持できていません。フィリピンは観光客の増加だけでなく、1人当たりの支出を増やす施策も必要であると指摘されています。
世界貿易の不確実性の中で、投資の低迷が経済成長を抑制する可能性があります。ただし、HSBCは政策金利差の縮小や為替変動の抑制は「ゆっくりと段階的に進めることが重要である」と強調しています。急激な緩和策をとれば、為替市場の過度な変動を引き起こし、通貨の急落によるインフレリスクや企業の財務健全性への悪影響をもたらす可能性があるためです。
それでも、HSBCはフィリピン経済がペソの変動によるインフレ圧力を吸収する余地があると述べています。現在、コアインフレ率は目標範囲内に収まっており、BSPは一定の為替変動によるインフレを許容できる状況にあると指摘しています。よりタカ派的なFRBの政策はフィリピンの金融政策にリスクをもたらす可能性があるものの、BSPは今後、為替の変動に対してより寛容になり、FRBが金利を据え置いても独自に緩和政策を進める可能性があるとしています。
HSBCはBSPが2025年に合計75ベーシスポイントの利下げを行い、年末には政策金利が5%に達すると予測しています。第2四半期、 第3四半期、 第4四半期にそれぞれ25ベーシスポイントずつ引き下げる見通しです。この利下げによりペソの変動が生じる可能性がありますが、成長の鈍化というリスクがそれを上回ると考えられます。
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