トランプ関税、フィリピン不動産への影響は?
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フィリピンの不動産市場は、トランプ大統領の関税政策の影響を受け、変化の兆しを見せています。この関税政策は世界市場に動揺を与え、フィリピンでは特に産業用およびオフィス不動産セクターに具体的な影響が出始めています。
フィリピン政府はこの貿易不安を逆手に取り、「中国+1+1」の製造拠点として自国を位置づけ、製造業への外国直接投資(FDI)を積極的に誘致してきました。2024年にはFDIの95%が製造業に流れ、2021年から2024年まで年平均成長率38.63%を記録しました。
しかしながら、フィリピンは依然として高い電力コスト、規制の複雑さ、不安定な政策運営といった構造的課題を抱えています。
電力料金はASEANで三番目に高く、世界的な規制の簡素化ランキングや腐敗認識指数でも低順位にとどまっています。これにより、潜在的な投資機会が完全には実現していない現状です。また、フィリピンの輸出の16.8%が米国向けであり、貿易摩擦の影響を受けやすい状況にあります。ただし、日本、香港、中国向け輸出もそれぞれ10%以上を占めており、輸出先の分散によるリスク軽減が可能とされています。
一方、建設資材市場では、フィリピン国内の鉄鋼生産量が需要を大きく下回っており、年間720万トンもの鉄鋼を主に中国から輸入しています。米国市場向け中国製鉄鋼の輸出減少により、アジア市場に過剰供給が流れ込み、フィリピンにとっては建設コストの低下という恩恵を受ける可能性が高まっています。特にインフラ開発や工業団地建設において、このコスト低下はプロジェクト推進を後押しする要因となるでしょう。
オフィス不動産市場では、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業が米国市場への依存度の高さから、間接的な影響を受けています。2024年にはフィリピンGDPの9%、オフィス需要の19%を占めたこの産業も、2025年の成長率は7%未満と予測されています。ただし、フィリピンはAIスキルの普及率が高く、今後は医療、金融、データ分析分野へと業務を高度化することで、BPO産業の競争力維持が期待されています。
短期的には、製造業向けの電力コスト支援策がフィリピンの競争力を高める鍵となり得ます。ベトナムやドイツのように、産業向け電力補助金政策を導入することで、より多くの外資系製造業を呼び込む可能性が指摘されています。
総評
フィリピンは、世界的な貿易摩擦という逆風の中で、自国の製造・不動産セクターを強化する好機を迎えています。課題は山積していますが、エネルギー政策改革や人材育成を通じて、長期的成長への道を切り拓く可能性を秘めています。戦略的な対応が今後の命運を左右するでしょう。
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