フィリピン中間選挙、経済、ビジネスへの影響は?
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フィリピンの中間選挙は、長年続いたドゥテルテ一族にとって試練の場と見られていました。元大統領ドゥテルテ氏は、2024年3月に国際刑事裁判所(ICC)によって人道に対する罪で逮捕され、ハーグに拘束されている状態です。また、副大統領であり実質的な後継者である娘のサラ・ドゥテルテ氏も、2月に汚職や現職大統領マルコス・ジュニア氏への殺害脅迫などの容疑で下院によって弾劾され、年内に上院での裁判を控えています。
しかし、5月12日に行われた選挙ではドゥテルテ一族の勢力がむしろ強まりました。過酷な暑さの中、多くの有権者が投票所に足を運び、ドゥテルテ氏本人とその末息子セバスチャン氏が、ドゥテルテ一族の地盤であるダバオ市の市長と副市長にそれぞれ当選しました。ロドリゴ氏が拘束中であるため、実際の業務はセバスチャン氏が担うとみられます。
また、上院選ではドゥテルテ氏の側近であるクリストファー・ゴー氏や、麻薬戦争中に警察長官を務めたロナルド・デラ・ロサ氏が上位で当選しました。さらに、下院議員だったロダンテ・マルコレタ氏も上院議員に選出され、彼はサラ氏の弾劾に反対の立場を示しています。こうした結果から、一部の有権者や専門家はドゥテルテ派の復権を指摘しています。
選挙後、サラ氏は声明で「これは終わりではなく、新たな始まりです」と述べ、自身とその支持勢力を政府に対する建設的な野党として位置付けました。マルコス政権下では、生活費の高騰や腐敗問題への対応不足、さらにドゥテルテ派との対立が支持率低下の要因となっており、政権運営に不安要素が残ります。
一方で、ロドリゴ・ドゥテルテ氏のICCによる逮捕は、被害者遺族にとっては正義への第一歩とされています。人権団体によれば、彼の麻薬戦争では3万人以上が殺害され、多くの家族が真相究明と責任追及を求めてきました。しかし、国内ではその厳しい政策が「効果的」とみなされ、一定の支持を集めたことも事実です。
今後、最も注目される政治の舞台は6月に再開される上院であり、サラ氏の弾劾審議が最大の焦点です。上院で3分の2の賛成が得られれば、有罪となり公職追放となりますが、彼女は2028年の大統領選における有力候補と目されています。
総評:
フィリピンの2025年中間選挙は、今後の経済政策やビジネス環境に一定の影響を及ぼす重要な節目となりました。今回の選挙では、現政権の政策継続に対する期待とともに、主要政治勢力間の対立や政局の不透明感も浮き彫りになっています。
今後は、インフラ投資や経済自由化など現行路線の維持が見込まれる一方、議会内での勢力バランスの変化によって政策決定が遅れる可能性も指摘されています。また、地方選挙の結果は、各地域でのビジネス展開や許認可手続き、税制運用などにも影響を与えると考えられます。
経済面では、選挙期間中の一時的な政府支出の停滞や政策執行の遅れが短期的なリスクとなる一方、長期的には人口増加や消費市場の拡大など、引き続き成長ポテンシャルが高いと評価されています。外資系企業や投資家にとっては、今後の政策の予見性や規制環境の変化を見極めつつ、慎重な事業判断が求められる状況です。
総じて、今回の選挙はフィリピン経済の成長基調を大きく変えるものではありませんが、政局の安定性や政策運営の方向性が今後のビジネス環境に影響を与えるため、引き続き動向を注視する必要があります。
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