米トランプ政権のフレンドショアリング政策はフィリピンにチャンス by HSBC
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フィリピンは、米国の「フレンドショアリング(友好国への生産移転)」戦略や、中国拠点企業の「チャイナ+1+1」戦略の中で、今後外国直接投資(FDI)を呼び込む有望な国として注目されています。
HSBCグローバル・リサーチの報告によると、現在一時停止中の米国の相互関税制度において、フィリピンは東南アジア諸国の中で2番目に低い17%の関税率が適用されており、米国との良好な外交関係や低関税の可能性が、グローバル投資家にとって多様化の機会を提供しそうです。
米国は既にフィリピンの第2の貿易相手国であり、特に電子機器分野では主要な輸出市場となっています。2024年には、フィリピンの対米輸出額は121億2000万ドルに達し、主な輸出品目は半導体、電子集積回路、絶縁ワイヤーなどとなっています。HSBCは、フィリピンが米国市場におけるシェアを拡大できる可能性を指摘し、他国に後れを取っている現状においても、関税優遇や地政学的立地などの好条件により、巻き返しのチャンスがあると見ています。
また、グローバルなサプライチェーンの再編成が進む中で、ニアショアリングやリショアリング(自国内回帰)の流れが加速する中、フィリピンは米国にとってリスクが低く、ASEAN諸国の中でも最も友好関係にある国とされ、今後フレンドショアリングの受け皿となる可能性が高いと評価されています。人口動態の魅力、産業インフラの整備、そして米国との友好な関係が、投資家に対する前向きなシグナルになるとされています。
さらに、フィリピンは半導体チップの組立、検査、パッケージングにおいて、アジアのテックサプライチェーンの中で重要な位置を占めていますが、同地域の他国と比較して競争力はやや劣るとの指摘もあります。主な課題としては、製造業よりもサービス業を重視してきた政策、高度技能人材の不足、高い電力コスト、規制の複雑さなどが挙げられています。
しかし、フィリピン政府は現在、電子産業の発展を支援するための構造改革を進めており、ビジネス環境の改善やFDI誘致に向けて前向きな動きが見られます。投資が増加すれば、グローバルなテックサプライチェーンの中での存在感を高め、高付加価値の輸出品への転換も期待されます。また、インフラ整備の加速や民間・公共投資の連鎖的な活性化も見込まれています。
ただし、90日間の関税一時停止措置の終了後の見通しは依然として不透明であり、米国が半導体輸入に対して高関税を課すリスクも存在します。これは、地域全体のテクノロジー産業に大きな影響を与える可能性があり、フィリピンも例外ではありません。
総評:
フィリピンは地政学的な利点と米国との良好な関係を活かして、フレンドショアリングやチャイナ+1+1戦略の恩恵を受ける位置にあります。課題はあるものの、構造改革の進展により、投資先としての魅力は増しています。今後の関税交渉の行方と政府の実行力が、成否を大きく左右するでしょう。
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