フィリピン電力セクターの信頼回復へ
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フィリピンの電力インフラにおける重要な転換点が近づいています。フィリピン電力規制委員会(ERC)は、国家送電網コーポレーション(NGCP)の第5次規制期間(5RP)に関する料金リセットの最終決定を、来年中に下す見通しであることを明らかにしました。この決定は、2027年までの送電ネットワークにおける許容収益率やコスト回収のパラメータを確定させるものであり、長らく停滞していた規制環境に一石を投じる重要な動きとして注目されています。
今回のERCによる発表は、電力セクター全体にとって非常に前向きなシグナルであると捉えることができます。送電料金のリセットが適時行われることは、単に数字が決まるということ以上の意味を持ちます。まず、送電関連の不確実性が解消されることで、グリッド(送電網)の拡張計画に対する見通しが大幅に改善されます。これは、フィリピンが国を挙げて取り組んでいる再生可能エネルギーの導入加速や、長期的な電力システムの信頼性確保において不可欠な要素です。
さらに、今回の動きはERCの姿勢の変化を象徴しています。これまでの遅延していた料金リセットを積極的に解消しようとするプロアクティブなアプローチは、電力バリューチェーン全体における規制当局への信頼を回復させる一助となるでしょう。今後は、最終決定に含まれる承認収益率や設備投資(CAPEX)の想定、そして回収メカニズムの内容が重要な焦点となります。これらの内容が、新たな発電容量を受け入れるためのグリッドの準備状況を左右し、さらには今後控えている配電事業(DU)の料金リセットのペースや規律を占う先行指標にもなるからです。
投資戦略の観点からは、電力セクターに対して引き続き建設的な見方を維持することが妥当と言えます。今回の料金リセット自体は、即座に企業の直接的な利益を押し上げるトリガーにはならないかもしれません。しかし、規制面でのモメンタムが改善されることは、事業の実行リスクを低減させ、中長期的な企業価値(バリュエーション)の透明性を高めることにつながります。透明性の高い規制環境は、国内外の投資家を呼び込み、フィリピンのエネルギー転換を支える強固な基盤となるはずです。
総評 :
今回のERCによる前向きな姿勢は、フィリピン電力市場の不透明感を払拭する重要な一歩となります。送電網の整備が明確なスケジュールで進むことは、再生可能エネルギーへの投資を加速させる呼び水となるでしょう。規制の正常化がセクター全体の安定性を高め、長期的な経済成長を支えるインフラ強化に寄与することが期待されます。
本記事は、フィリピンの証券会社・ABキャピタル証券の20251217のレポート・ The Opening Bellから抜粋、要約し、筆者のコメントを加えたのです。
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