フィリピン経済の再起:2027年の6%成長回帰への道筋 by アジア開発銀行
ニュース記事
アジア開発銀行(ADB)は、フィリピン経済が2027年までに約6%の成長率を回復する可能性があるとの見通しを示しました。この回復の鍵を握るのは、停滞していた公的および民間投資の再活性化です。これまでの経緯を振り返ると、フィリピン経済は昨年の汚職スキャンダルに端を発した政府支出の停滞、投資家心理の悪化、そして個人消費の減退により、成長の勢いを一時的に失っていました。
この影響を受け、ADBは2025年の国内総生産(GDP)成長率予測を従来の5.6%から5%へ、2026年についても5.7%から5.3%へとそれぞれ下方修正しています。特に今年の公共事業道路省(DPWH)の予算削減が、国内資金によるプロジェクトの大幅な遅延を招くリスクが懸念されていました。しかし、フィリピン政府は現在、優先プロジェクトの停滞を解消するための「クリーンアップ」作業と並行して、主要なインフラ事業を加速させる二段構えの戦略を進めています。DPWHは、道路や橋の維持管理といった基本事項を優先しつつ、第1四半期だけで最大2,500億ペソの支出を目標に掲げており、この公的投資の回復が2026年以降の成長の呼び水になると期待されています。
また、ADBは、長期的な成長を支えるためには輸出の拡大と産業の多様化が不可欠であると指摘しています。フィリピンは他国に比べて輸出が経済に占める割合が低いため、外部ショックには強い反面、爆発的な成長には限界があります。島嶼国ゆえの物流コストの高さという構造的な課題はありますが、近隣諸国の成功例に学び、ビジネス環境の改善や投資誘致を継続することが求められています。
さらに、フィリピン華僑商工会議所(FFCCCII)などの経済団体は、不透明な状況下での信頼回復に向けたさらなる改革を提言しています。具体的には、製造業や農業におけるテクノロジー導入の支援、食料安全保障の強化、徹底した汚職防止策の実施、そして観光業を刷新するための世界水準のインフラ整備などが挙げられます。これらの構造改革が着実に実行されれば、2028年の大統領選挙に向けた政府支出の拡大という追い風も加わり、フィリピンは再び高い成長軌道に戻ることができるでしょう。
【総評】
フィリピン経済は、内政上の混乱による一時的な停滞期にありますが、インフラ投資の再加速と構造改革への意志が再起の鍵となります。ADBの予測は、足元の課題を直視しつつも、適切な投資と政策が伴えば、再びASEANの成長リーダーの一角を担えるポテンシャルを評価したものです。輸出の多様化や物流コストの削減といった長年の課題を克服し、持続可能な成長を実現できるか、今が正念場と言えるでしょう。
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