ドイツ企業がフィリピンに40億ドルの投資表明 〜人材育成や再生可能エネルギー分野で協力を強化〜
ニュース記事
フィリピン大統領府は、ドイツ企業がフィリピンへの投資として40億ドル(フィリピンペソで2,200億ペソ)相当の額を表明したと3/12火曜日に発表しました。
フィリピンは、「志を同じくする」国との経済関係強化を目指しています。
マルコス大統領は、地政学的な緊張が高まる中、サプライチェーンのリスクを軽減し多様化させようとする企業が、外国直接投資 (FDI) の獲得で東南アジア域内各国に後れを取っているフィリピンを投資先として検討してくれることを期待しています。
マルコス大統領は、ベルリンで開催されたフィリピン・ドイツ経済フォーラムで、イノベーションシンクタンクの設立を目指す覚書など、計8件の合意を取り付けました。覚書の一つにはフィリピンへの完全統合型太陽電池製造施設の設立提案が含まれています。
また、荒廃農地の復元・再生・再耕作を目指す官民パートナーシップ(PPP)をドイツ企業と締結したと述べました。
さらに、モビリティソリューション、ソフトウェアサービス、製造業、工場自動化、物流サービス、エネルギー、建物・家電・医療機器向けのセキュリティ・安全システムなどでの潜在的な協力拡大と、ドイツ企業が東南アジア市場向けのデジタル保険プラットフォームをホストするデータセンターをフィリピンに設置する計画についても合意がなされたとしています。
ドイツは欧州最大の経済大国で、アメリカと中国に次ぐ世界第3位の経済大国(円安の影響もあり日本は4位に)です。
マルコス大統領は、フィリピンはアジアで最高レベルの電気料金となっているにもかかわらず、ビジネスフォーラムでフィリピンをスマート投資の地域ハブとして位置づけました。
マルコス大統領は、マニラとベルリンはどちらもリスクのない多様化された生産および市場バリューチェーンを求めており、地政学的なリスクに直面している経済は将来に備える必要があると述べました。
また、ドイツは再生可能エネルギーのためのエネルギー蓄電技術の世界的リーダーであるとして、フィリピンは再生可能エネルギープロジェクトを進める上で欧州各国の協力を求めていると述べました。
マルコス大統領は、ドイツのショルツ首相との会談後の共同記者声明で、フィリピンは製造業、建設・インフラ、情報技術とビジネスプロセス管理、イノベーションとスタートアップ、再生可能エネルギーと鉱物加工の分野でドイツとの協力を望んでいると述べました。
「投資実現への課題」
アテネオ大学のレオナルド・A・ランソナ経済学教授は、フィリピンでこれらのプロジェクトを実現させるための課題として、非常に高いエネルギーコストと熟練労働力が不足していることを上げています。
フィリピンの労働省は昨年、エンジニアリング、建築、建設分野で約100万人の熟練労働者が不足していると述べていました。
2022年の国際学習到達度調査によると、フィリピンの学生は依然として数学、読解力、科学において世界で最も成績が低く、81カ国中77位にランクされ、どの科目でも世界平均を下回っていました。
マルコス大統領の訪問中に、フィリピンの技術教育技能開発局とドイツの連邦職業教育訓練所は、フィリピン人労働者のスキルアップとリスキルアップを目指す協力協定を締結しました。
マルコス大統領は、2022年6月に就任してからすでに20回以上の海外出張を行っていて、2024年の国内外出張には約14億8千万ペソが割り当てられており、昨年の8億9,357万ペソから58%増やしています。
「課題・取り組み・展望」
ドイツ企業からの40億ドルの投資表明は、フィリピン経済にとって大きな可能性を秘めています。しかし、いくつかの課題も存在します。
(1)課題
高いエネルギーコスト
熟練労働力不足
インフラ整備の遅れ
汚職
これらの課題を克服するために、フィリピン政府は以下のような取り組みを進めています。
(2)取り組み
エネルギーコストの削減
職業訓練の強化
インフラ整備への投資
汚職対策
これらの取り組みが成功すれば、フィリピンはより魅力的な投資先となり、経済成長と雇用創出につながることが期待されます。
(3)展望
ドイツ企業からの投資は、フィリピン経済に新たな活力を与える可能性があります。特に、再生可能エネルギー、製造業、情報技術などの分野で、両国の協力が深まることが期待されます。
また、今回の投資表明は、フィリピンが中国からの距離をおき、「志を同じくする」国との経済関係強化を目指していることを示しており、今後、日本や欧米諸国との経済関係がさらに深化していく可能性があります。
まとめ
ドイツ企業がフィリピンへの投資として40億ドルの表明
投資分野は、人材育成、再生可能エネルギー、製造業、建設・インフラなど
フィリピンは、高いエネルギーコストと熟練労働力不足という課題を抱えている
マルコス大統領は、ドイツとの協力を強化し、経済関係を深化させたい意向
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