フィリピンの信用格付け、当面は安泰 ―中東紛争リスクの影でー by Moody’s
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ムーディーズ・レーティングスは2026年3月18日、フィリピンの信用格付けについて、中東情勢の悪化という新たなリスクが生じているものの、同国の強固な対外ポジションと外貨準備バッファーを踏まえると、近い将来に格下げを行う可能性は低いとの見方を示しました。
同社は、オンライン記者会見において、「ベースラインの想定の下では、フィリピンに対して差し迫った格下げや否定的な格付け行動を見込んでいない」と述べました。ただし、その判断が紛争の深刻さと長期化の程度、そして政府の政策対応にも左右されると強調し、フィリピンは政策有効性において強固な実績を持つと評価しました。
懸念材料として挙げられたのは、中東紛争に伴う原油・食料・資材価格の高騰がフィリピンの対外収支に与える影響です。同国は通常、GDP比約3%の経常赤字を抱えていますが、原油価格が100ドル高い水準で長期間推移した場合、赤字幅がさらに約1ポイント拡大し、GDP比4%超に達する恐れがあるとしています。また、フィリピンは中東からの石油輸入依存度が約98%に達し、ホルムズ海峡の部分的な閉鎖による原油貿易の混乱に対して特に脆弱な立場にあります。現地では戦争勃発から3週間でガソリン価格が1リットル100ペソを超える水準にまで急騰しており、インフレ圧力は消費者に直接影響を及ぼしています。
一方、経済成長については、ムーディーズは2026年のフィリピンのGDP成長率予測を5.5%に維持しており、これはフィリピン中央銀行(BSP)による金融緩和の効果が一定の下支えとなるためとしています。この見通しが実現すれば、2025年のコロナ禍前低水準である4.4%成長を大幅に上回ることになります。ムーディーズはフィリピンの長期信用格付けを「Baa2・安定的」に据え置いており、引き続き投資適格圏を維持しています。
【総評】
中東紛争の長期化という想定外のリスクにさらされながらも、フィリピンの信用格付けは当面維持される見通しであり、マクロ経済の底堅さが改めて確認された形です。しかしながら、エネルギー輸入への高度な依存という構造的脆弱性は依然として課題であり、紛争の行方次第では状況が急変する可能性も否定できません。政府と中央銀行が機動的な政策対応を維持できるかが、今後の格付け動向を左右する最大の焦点となるでしょう。
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